<前書き> ファッション本を共著 「誰もがファッションを楽しめる社会」、「21世紀にふさわしい新しい美の創造」を目指して活動しているのが、ユニバーサルファション協会です。そのために、デザイナー、製造業者、流通業者、ジャーナリスト、消費者がそれぞれの立場で、商品開発・改良や新製品の普及・広報に関わっています。このたび、同協会では「ユニバーサルファッション宣言PartⅡ」の出版を行いました。パリコレクションの新しい傾向から、バリアフリー衣料とユニバーサルとの相違点等まで、各ジャンルで記述しています。 「ボランティアから生まれる新ビジネス」を書きました 10名の記述者の大半やファッション関係者ですが、私は表題の部分を書いています。内容は、中高年世代のファッションの向上化と、中高年世代の一般参加者によるショーの開催、そこから生まれる新しいビジネスの展望を記しました。以下は、その文章の元文です。出版本のページ数の関係で、元文から後半部分がかなり削除されています。この際、全文を掲載いたします。 <本文> 中高年も世代を超えておしゃれを楽しみ、体験を向上させる <中高年が楽しく集うファッションショー> 様々な体型の中高年一般男女参加者が、衣装とメイクを変えて舞台に登場するのが「ミラクルエイジファッションショー」である。この中高年者(ここでは58歳以上で無制限とされる)が参加するファッションショーは、首都圏西南部の町田市・相模原市を中心に開催されている。ただし、そのモデル希望者は、広く東京都内や神奈川県全域の参加者が集まる規模となっている。その発表公演では通常2ステージの開催で500名ほどの観客を集め、すでに2008年には3回目を数えている。 他方で、この「ミラクルエイジファッションショー」の開催をメインで支えるのが、「アジアの風21」である。「アジアの風21」は、2001年からファッションショーを柱とした舞台活動を通して文化交流を行っている。この舞台は「天空」と名づけられており、毎回テーマを設定し、音楽ライブとファッションショーのコラボレーションで構成されている。海外文化交流では東南アジア、中東、欧州と公演の場を広げている。 この「ミラクルエイジファッションショー」や「アジアの風21」の取り組みは、長い伝統と新たな挑戦で今日に至ったものであるが、まず、「ミラクルエイジファッションショー」の活動内容から紹介する。 この取り組みで、一般の出演者は、各分野のプロの指導を数ヶ月間にわたって受け、モデルとして練習を重ねる。まず、ファッションコーディネイトなどの座学講義と、専門のインストラクターからウオーキングの指導を受け、仕上げはプロモデルに舞台歩きの指導も受ける。モデル応募の受付から本番のショー出演に至るまで、全部で実に15回ほどのトレーニングとリハーサルを行う。そして、最後に練習の成果を発揮するべく、大勢の観客の前でショーのモデルとして、1ステージに、2から3回の舞台登場となる。 この「ミラクルエイジファッションショー」の運営は実行委員会方式で行われており、多数の着付けボランティアとメイクの協力者が加わり、モデルは一般参加者を対象としているのが特徴である。そこでは、着物などのタンスに眠ったままの衣装を着まわし装いに工夫をすることと、自分にあった装いを知ることが大きな柱とされている。つまり、モデル役になる人は、モデル体験をおしゃれ志向の生活に繋げることが目標となる。また、いつまでも元気で若々しく装う気持ちを持続し、自分だけでなく、見る人にも刺激を与えることもその目標とされている。 ショーの開催案内が生活情報紙で事前に取りあげられることで、一般の観客が多数集まっている。実は、その都度の公演発表を通じて、新規の出演希望者を生み出している。前回は観客であった人物が、次回はモデル希望者になり、さらに出演者になっている。「ミラクルエイジファッションショー」が永続してきたのは、そうした特徴を持つからである。 参加者からは、「背が高くなくとも、すらりとした体型でなくとも姿勢を正すこと、明るい色に挑んでみること、鞄や帽子にも請ってみることなど、おしゃれは自由に楽しめると実感しました」という声もあった。 <参加者が輝いているファッションショー> この「ミラクルファッションショー」の運動は、町田市が高齢者福祉施策の新事業として、2000年に始めた「ワンダフルエイジファッションショー」を引き継ぐものである。いくつかの形態(ワンダフルフレンズなど)を経て、行政の手を離れた以降から今日まで、人気を増しながら続いてきた取り組みである。 その町田市が行った「ワンダフルエイジファッションショー」の当時は、行政が中核になって実施したスタイルの事業であった。参加は一般募集のモデル、メイクは市内の美容室協会、着付けなどは市内の服飾短大生も参加していた。他に、市内のデパートや老人会も名を連ねた大掛かりな体制を装う企画であった。つまり、行政が行う市民参加型事業の一般的なスタイルで関係団体を網羅する形態をとったのである。まずは行政が直轄事業で行い、以降はNPO組織がメインになって事業を担当するという形であった。この事業主体の変更は、自治体による財政支出のサンセット(年次を決めて終了する)方式によるものであった。 確かに、その間の行政の係わりによって地域市民への認知度や参加者の広がりはあったが、名前だけの団体参加やその調整機能へのエネルギーは無視できないものであった。通常の市民活動では、行政の財政補助や人的支援がなくなると、急速に活動が消滅や縮小するケースが多いが、この高齢者ファッションショー運動はそうした経過を取ることはなかった。むしろ、行政が係わる以前の状態に戻り、より自由な活動をする経過を踏んでいる。 その理由は、下記のプロセスが大きな役割を果たしたと考えている。 この高齢者ファッションショー開催運動が定着した活動となってきたのは、それ以前の社会文化的な経験や人材・組織のかかわりがあってこそのものである。まず社会的背景には、町田市で30年以上の歴史を持つ「消費生活センター運営協議会」の存在である。この「町田市消費生活センター運営協議会」は、今でこそ男性の参加も普通になっているが、当初は主婦が参加して行政と一体運営するというボランティアが大きな力を持っていたのである。そこでは、古着を収集するリサイクル活動や講演会を定期的に開催してきたのである。 それ以上に、この地域に1990年頃にスタートした「主婦のためのファッションショー実行委員会」(現アジアの風21)の存在は欠かせない。この取り組みは、若い頃に着ていた洋服や古い着物をリフォームした服をたくさん用い、ユニークなファッションショーを開催するものであった。女性用ファッションの実用性も主張した企画であり、「ライブファッションショー着まわしコレクション」などの名称・形態で、10年近い活動実績を経ていた。 その両者を組み合わせ、中年男性にもファッションを楽しむ機会を提供する場を1997年より町田市エリアで開催したのが、「熟年世代のためのファッションショー」であった。「古着のリサイクル活動」案内講演や「カラーコーディネイト」講座、「ユニバーサルファッション講座」、あるいは「ナイガイ」の中高年向けジーンズを使ったファッションショーも開催した。この活動を町田市が転用し、行政が予算を盛り込み音頭を取り、新たに高齢者のおしゃれと健康増進の活動として、開催したのが「ワンダフルフレンズファションショー」であった。 <地域文化としての音楽&ファッションショー集団の活動> 他方で、「主婦のためのファッションショー」を開催してきた流れでは、1999年までは「ライブファッション実行委員会」と言ってファッション中心のショー展開をしてきたものが、2000年に装いを替え、2001年より、音楽とファッションを組み合わせた新たなライブショーに転換して拡大している。これが、「アジアの風21」であり、「天空」の名称の公演で海外公演も踏まえた文化交流事業にも拡大させている。 「アジアの風21」自身では、「"装う"文化を通し、色々な国・人々とジョイントし、お互いの 「文化」 を尊重しつつ、感性、活動、を刺激し合う事を目的に活動しているグループ」と表現している。特徴では、相模原・町田というエリアをメインにして、参加者の多くが日頃から密接な交流をもって、この運動を展開していることである。そのことで、行政の支援や特定企業のバックアップがまったくなくても、エネルギッシュに永続してきた背景を生んできたと言える。 まず、このショーのファッションショー部門では、参加メンバーとして、プロモデルとアマチュアが競演することが特徴である。アマチュアの人材では、毎回の公募と準常任メンバーで構成されている。プロのメンバーの場合は、その時々のテーマで参加者ががらりと換わる時もある。テーマ優先としていることがうかがえる。 次いで、国際交流事業へのスタンスでは、毎回テーマや国を替え、海外の民族衣装や文化に目を向ける活動を展開している。他方で、日本の伝統的な着物やそのリメイクした洋服を用いて、「和」の文化を伝承する日本文化普及事業を海外で展開している。 そこで、この「アジアの風21」では、着物をリメイクした洋装のファッションが重要な役割をなしている。上記の海外交流事業などにおいては、ショー衣装の中心的なアイテムであることもある。そこで、このファッションを作り出す作業部門や人材が必要となるが、これをハンドメイドで行うメンバー自身を養成、人材を豊富にそろえているのが特徴である。あわせて、ショーの着付けを行うメンバーなど、いわゆる「裏方部門」も充実していることが特徴である。 また、「アジアの風21」は、センスアップ勉強会の開催、地域の学校行事指導などにもネットワークを広げている。そうしたバックボーンがあって、ミラクルエイジファッションショーの企画や技術指導まで行えているのである。 <参加と経験を蓄積したスキルアップと事業化> この「ミラクルエイジファッションショー」に至る、中高年のファッションショー開催の運動取り組みが、ローカルな活動としてなぜこのように続いてきたのか。 基本に立ち返って説明すると、ファションショーは装いであることから、モデルのおのおのは何度か服を取り替えて登場するのが特徴である。そのスムーズな登場のためには、メイク、ヘアー、着付けスタッフの陣容が充実していることが欠かせない。ましてや、素人のモデルが参加してショーを行うのだから、そうした舞台裏を支える陣容以外にも、開催の準備に始まって、開催のまとめに至るまでに諸係りのメンバーも大勢必要とする。その点、この「ミラクルエイジファッションショー」では、以前にモデルとして参加した人たちが、以降も実行委員に加わる形で、着付けスタッフの手伝いなどに順次、参加スタイルを変化することでレベルアップを図ってきている。 特に、着付けの従事者や、着まわしのファッションを整理する人材は欠かせない。このショーにモデル参加した人で、更に充実を求める人が裏方に廻って再結集する機会も生んでいることで、構成されているのである。そうした中で、この「ミラクルエイジファッションショー」に係わった人材が、さらにレベルアップを目指して、「アジアの風21」にも参加するケースも生まれている。また、今日ではショーのメイク部門などで、専門学校生徒をアシスタントに迎えることもあり、学校全体が授業の一環として係わるケースもある。それらの取組は、学校での単位とされている。 この「ミラクルエイジファッションショー」は、当初からメディアに大きな関心を持って迎えられてきた。継続的なショーの開催自体が高齢者の意欲的な活動として評価され、地域を越えた全国紙やTVの取材報道を毎回受けている。 当初からこの活動にモデル参加したメンバーの1人は、「60歳になって生活に刺激がほしいと思い参加しました。以前は黒い服ばかり着ていましたが、今は明るい色に挑戦し、カラーを楽しんで着ています。また、ウオーキングの指導も受け、姿勢にも気をつけるようになり、周りの人々から若くなったと言われ,いきるエネルギーになっています。とにかく、元気になりますね」と語っている。 また、別の参加者は、「自分が思っていた『好きな色』と『似合う色』が違っていることを学習しながら体験して知ることができました」とも語っている。 この「ミラクルエイジファッションショー」は、その元気と明るさを発揮する場として、次回のショー開催に向けたエネルギーとするとともに、新たな社会参加を目指しているのである。 他方で、「アジアの風21」は長年のファッションショーの開催を通じて、さまざまのノウハウを蓄積していると思われる。 先にあげた、センスアップ勉強会の開催、地域の学校行事指導などはボランティア事業として行われているが、その一部は直ぐにも企業的な事業に転化可能な形態である。5年後、10年後にはどのような形態に成長しているか、今後の展開に注目したい。 また、「アジアの風21」は、その内部スタッフが着物を洋服に着まわしする技術のスキルアップを図ってきたことで、ショーの衣装部門では、ボランティア活動からビジネス活動へと活かされつつある。例えば、ショーの舞台用に製作した衣装類を、タイアップした百貨店で販売するという機会も生まれている。また、それらの製品をネット販売に流せば、直ぐにも顧客が生まれるであろう。 また、「アジアの風21」は海外公演に実績を重ねている。従来からの研究姿勢でもって、海外文化から吸収するショー開催のノウハウ、使用するファッション製品の多様さによって、その活動自体が更にファッションビジネスへの参入となっていくだろう。 この両者の発展で、首都圏西南部の町田市・相模原市を注進するエリアが、全国の中高年者ファッションの最先端地として繁栄することを期待する。 2008年3月7日 吉田つとむ 記 |